もう二度と、あの日には戻れないと知っていた。
メンバー 35ノート 30
春の終わり、空は淡く滲んでいた。 風に溶けた花びらが、ゆっくりと地面に降り積もる。 かすかに残る温度と、ほどけかけた記憶が胸の奥を掠める。 踏みしめた道はどこまでも続いているはずなのに、足はもう前に進まない。 耳の奥に残った微かな音だけが、時間の隙間にそっと揺れている。 遠ざかる季節の匂いは、もう二度と手の中には戻らない。 あの日交わさなかった言葉たちは、冷たい風に飲み込まれ、誰にも届かないまま消えていった。 日が落ちるたびに、何かが確実に失われていく。 それが何かを知っていながら、声を上げることもできずに、ただ立ち尽くしていた。 静寂の中、世界は少しずつ色を失っていく。 残ったものは、空白ばかりだ。 触れられなかったもの、伝えられなかったこと、すべてがひとひらの影になって遠ざかっていく。 あたたかかった光景も、今はひび割れた鏡のように歪み、手を伸ばしても触れることができない。 冷たい夜の底で、かすかに脈打つ鼓動だけが、生きている証のように響く。 静かに夜が降りてきて、何もなかったように世界を包み込んだ。 それでも、ひとつだけ確かにここにある。 名前を持たない想いだけが、息をひそめながら、もう帰ることのない春を待ち続けていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 三大厨厳禁。 #k也#K也