まるで風のなかに溶けてしまいそうな、羽根みたいな声で彼女は笑った。その笑みはまるで、ひと晩じゅう磨かれたシャンデリアの、いちばん端に咲いた硝子の蕾みたいで、見上げた誰もがほんの少しまぶたを伏せたくなるような、そんな、完璧だった。彼女の歩く音は、音楽じゃなかった。けれど、床に舞い降りるたび、音符がふわりと浮かんでしまうようなそんな錯覚だけを残していった。髪には風の匂いと、夜明けの光。ドレスの裾には、誰にも触れられない永遠が縫いこまれていた。ああ、きっと彼女は、世界のどこかでそっと祈られて、生まれてきたのだろう。やわらかく、でも壊れない。愛されることを、知っているみたいに。 #也 #恋愛推奨 ⠀ ⠀